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2011年10月25日 (火)

男が書いたノート

男は人生に何かを見出そうと探していたわけではなく、
ただ自分の求めるままに、何となく考え、思いにふけっていました。

思いにふけっていると、何がしかイメージがわいてきて、
それをノートに書き込んでいました。

書き込もうとしても、思い浮かばなければペンを置き、ノートを閉じました。

気がつくといろんなことがそこには書かれていました。
読み返してみると、自分が書いたようにも思えるし、
自分が書いたように思えない言葉、メッセージの数々。

そこには、とてもほっとする言葉がたくさんちりばめられ、
そんな生き方ができれば、心から安心できて幸せになり、
豊かな人生を味わえる、そんな気持ちになりました。

でも、男が暮らしている小さな田舎町では、
そんな生き方をしている人は周りにはどこにもいないように思えました。

男はそれからも小さな田舎町で暮らし、
気が向いたらノートにメッセージを書いていました。
それは、誰のためでもなく、自分のためでもなく、
ただ、書くことは男の癒しにつながっていたようです。

それからずいぶんと年月が経ちました。
人々の暮らしぶりも豊かになり、平和で幸せな町へと変わっていきました。

この小さな田舎町に、最近、ちまたで有名な講演家がやってくるというので、
仲間たちに誘われて、彼も楽しみに聞きに行きました。

このような講演家が小さな田舎町にやってくることはめったにないので、
多くの人が集まっていました。

講演家はさすがにいろんな町で講演しているだけあって、実に話が上手です。
町の人はみんな講演家の話に聞き入りました。

気がつくと、どこかで聞いたことのあるような話がいくつも出てきます。
さて、どこで聞いた話だろう。

講演の後で、男は仲間や町の人と話をしました。
すると仲間たちも町の人も口々に話すのです。

「実は、今日の話、どこかで聞いたことがある話だったんだけど
どこで聞いたかわからないんだ。。。
何だか言い方違うんだが、でも、知ってるんだ。。。」

男は驚きながら、自分もそう思ったと話しました。

翌日、男はいつものように、ふと思いたってペンを取りノートを開きました。

何気に以前書いたところを開いてみると、はたと気がつきました。
昨日講演家が話した言葉を見つけたからです。

ページをめくってみました。
次のページをめくりました。

驚いたことに、そこかしこに、あの講演家の言葉がちりばめられていたのです。

男はノートを持って、仲間の家に行きました。
仲間の家に行く途中で、町の人があちらこちらで集まって何やらわいわい話しています。

何を話しているのかと近寄ってみると、みんなノートを持ち寄り、
お互いに見せ合って、この言葉だ、あの言葉だと話し合っているのです。

ノートはみんなそれぞれですが、男のノートと書いていることは同じようなものです。

講演家の話を聞かなかった人も、その不思議な出来事の話をそばで聞きながら、
うんうんとうなずき、いい話だ、いい話だと耳を傾け、
最近よくそう思ってたんだと目をまん丸にさせています。

みんな誰かに見せるわけじゃないから、ただ、思いつきを書いてただけだと
このノートの意味を深く感じることなく、
ただただ、自分の思いつくままにペンを持ったと言うのです。

男だけではなかったのです。

思い返せば、この数年間、町の様子は一変しました。

男は思い出しました。

以前は殺伐として何の変化もなく、未来への希望すら忘れ去ってしまった町のようでしたが、
男がノートに思いつきを書き始めた頃から町は次第に変化し始めていたこと。

そして、男の人生も、思いつく言葉を書き始めてからより豊かに、
安心で、幸せな暮らしに変わって行ったことを思い出したのです。

仲間や町の人に聞いてみると、ノートに言葉を書き出した人は、
男よりもずっと前から書いていた人もいました。
最近、書き始めた人もいました。

書き始めた時はそれぞれですが、みんな似たような言葉を書き、思いを持っていました。
不思議なものです。

あの講演家はなぜここに来たんだろう?と男は思いました。
彼も、ノートに書いていたんだろうか・・・
みんなのノートに彼の言葉が書いてあったのです。
でも、誰もそれに気づくことがありませんでした。

男は無駄なことを考えるのをやめました。
どうあれ、いま、男は満足していたからです。

人々の暮らしは、人生は、いつしか豊かで幸せなものとなり、
そこには、平和と喜びがありました。

みんな心の中に、平和と喜びを見出していたのです。

男も、町の人も、みんなそれからもノートへ思いついたことを書きました。

気の向くままに、気が向いたときに。。。


10月 25, 2011 心と体 |

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